Case
患者と薬局、双方の「納得」を追求する。セキ薬品が描く未来の薬局DX
埼玉県を中心に地域住民の健康を支える株式会社セキ薬品。同社の調剤営業部で活躍する竹野さんは、ドラッグストア併設型薬局の運営と発展に深く関わってきた人物です。竹野さんは、薬局の立ち上げから店舗運営の最適化まで、常に現場目線での改善を追求してきました。
今回は、メドレーが提供する患者向けアプリ「MEDIXSかかりつけ支援」を導入し、全社的な業務効率化と患者サービスの向上を推進している竹野さんにインタビュー。導入の決め手となった課題意識から、月間受付数の15%をアプリ経由にまで成長させた具体的な運用術、そして「受付業務の3割を削減できる」と期待を寄せる未来の機能まで、薬局DXのリアルな軌跡と展望を語っていただきました。

※以下より他の事例もまとめてご覧いただけます。ご参考になりますと幸いです。
地域に根ざし、多様なニーズに応える駅前のハブ薬局
はじめに、セキ薬品戸田公園店の特徴について教えていただけますか?
戸田公園店は、駅近くのドラッグストアに併設された薬局です。開業してから17年ほど経ち、小さいお子様からご高齢の方まで、非常に幅広い層の患者さんに来ていただいています。
駅前という立地から、近隣の戸田中央総合病院をはじめ、様々なクリニックの処方箋を受け付けています。月間で約300もの医療機関から処方箋を応需しており、これは社内の薬局の中でもかなり多い数です。都内からの処方箋も少なくありません。
また、営業時間が夜20時までなので、仕事帰りに立ち寄られる方も多く、特に18時から20時の時間帯は受付が非常に増えるという特徴があります。スマートフォンでのキャッシュレス決済に慣れている方が多い地域性も、後のアプリ導入がスムーズに進んだ一因だと感じています。
導入の決め手は「フォローアップの効率化」と「コスト最適化」
MEDIXSかかりつけ支援を導入されたきっかけを教えてください。
導入を決めた理由は大きく2つあります。1つは「服薬期間中のフォローアップのあり方」です。以前から電話でのフォローは実施していましたが、患者さんとなかなか繋がらず、結果として十分な件数を実施できていないという課題がありました。自社でのアプリ開発は難しいため、複数の他社サービスを比較検討する中で、MEDIXSかかりつけ支援が持つフォローアップ機能、特にアプリだけでなくSMS(ショートメッセージ)でも送信できる点に大きな魅力を感じました。
もう1つは「経費の抑制」です。当時、オンライン服薬指導・処方箋のネット予約はそれぞれ別のシステムを利用していたため、それぞれにコストがかかっていました。これらの機能をMEDIXSかかりつけ支援に集約することで、コストを最適化できると考えたのです。この「フォローアップの強化」と「経費抑制」という2つの軸が、導入の大きな決め手となりました。

受付から服薬指導まで、業務フローに溶け込むアプリ活用術
患者さんには、どのような流れでアプリをご案内していますか?
薬剤師が服薬指導の際にお声がけすることもありますが、最も多いのは受付のタイミングです。特に、お待ちいただいている患者さんの前で、アプリで予約された方を先にお呼びすると、「あれは何だろう?」と興味を持ってくださる方が多いですね。その際にすかさず「こちらのアプリをご利用いただくと、事前にお薬の準備ができてスムーズですよ」とご案内しています。
また、以前はドラッグストアのレジ近くに広告を出していましたが、今はアプリの案内チラシをレジで配布してもらうといった協力も得ています。戸田公園店のように長く運営している店舗では、ある程度関係性ができている患者さんが多いため、新規の方や興味を示してくださった方へ、スタッフが個別にご案内する形が中心になっています。
月間「2,000件」から「15,000件」へ。仕組み化で劇的に増加したフォローアップ
MEDIXSかかりつけ支援導入で、フォローアップの件数に変化はありましたか?
はい、劇的に変わりました。導入当初、会社全体で「まずは1日1件できれば良い」という目標でスタートし、月間のフォローアップ数は2,000件ほどでした。しかし、MEDIXSかかりつけ支援のメドレーの担当者と協力して送信しやすい運用方法を検討したりするうちに、現場での活用が浸透していきました。
今では、会社全体で月間15,000〜16,000件のフォローアップを実施するのが当たり前になっています。以前は「服薬指導」と「フォローアップ」が別の業務として捉えられがちでしたが、今では「服薬指導からフォローアップまでが一連の業務」という認識が全スタッフに浸透しました。この「仕組み化」が、件数増加の最大の要因だと感じています。
患者満足度と業務効率を両立させる具体的なメリット
実際に導入してみて、患者さんやスタッフから「導入して良かった」という声はありますか?
はい、多くの声が寄せられています。特に大きいのは、お薬の在庫がない場合の事前対応が可能になったことです。来局されてから「在庫がありません」とお伝えすると、患者さんをがっかりさせてしまいますが、事前にアプリで処方箋を送っていただければ、在庫の有無を確認し、「お薬がないので、後発品への変更でもよろしいですか?」といった代替案の提案や、取り寄せのご連絡を先に行うことができます。
これにより、患者さんが薬局に来てから長時間待ったり、再度来局していただいたりする「二度手間」をなくすことができます。薬局側としても、患者さんを逃さず、落ち着いて対応できる時間を確保できるため、双方にとって大きなメリットになっています。患者さんからも非常に好評です。
現場の声を未来の機能へ。さらなる進化への期待
今後、MEDIXSかかりつけ支援やmelmoの機能面で期待することは何ですか?
最も強化してほしいのは「お薬手帳」の機能です。現状、弊社では他社の電子お薬手帳も併用しており、患者さんにご不便をおかけしている部分があります。MEDIXSかかりつけ支援(メルモ)のアプリ1つで処方箋送信からお薬手帳の管理まで完結できるようになれば、患者さんにとっての利便性は格段に向上するはずです。マイナンバーカードとの連携による自動反映機能なども含め、シームレスなデータ連携に強く期待しています。
「受付業務の30%削減」も夢ではない。AI-OCR機能への熱い期待
その他に「こんな機能があったら」というご要望はありますか?
最も期待しているのは、AI-OCR機能による処方箋入力の自動化です。現状は、患者さんから送られてきた処方箋画像を印刷し、手で入力していますが、この画像データをAIが自動で読み取り、レセコンの入力画面に反映してくれる機能が実装されれば、薬局の業務は劇的に効率化されます。
現在、弊社の店舗では、多いところで月間受付数の3割がMEDIXSかかりつけ支援経由になっています。全社平均でも約15%に達しており、これは以前利用していた他社サービスを上回る数字です。もし、この15%の処方箋入力が自動化されれば、その分の時間を他の業務に充てることができ、計り知れない効果が生まれます。
この機能が実現すれば、スタッフは「自分の仕事が楽になる」と実感できるため、さらに積極的に患者さんへアプリを勧めるはずです。その結果、ネット予約が増え、オンライン服薬指導の普及にも繋がっていく。まさに好循環を生み出す起爆剤になると確信しています。
地域医療の変化を捉え、薬局の未来を切り拓く
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
これまでFAXに頼っていた処方箋送信の方法を、患者さん自身が選択する時代に変わってくるはずです。私たちはこれを大きなチャンスと捉え、アプリの利用促進をさらに強化していきたいと考えています。
AI-OCR機能のような革新的な機能が加われば、私たちは他の薬局に対しても自信を持ってmelmoおよび、MEDIXSかかりつけ支援を勧めることができます。それはメドレーにとっても、我々薬局業界全体にとっても、必ずプラスに働くと信じています。これからも現場の声を届け続けますので、共に医療の未来を創っていけることを楽しみにしています。